脱毛症の皮膚科での検査・治療

男性に多い脱毛症を取り上げて、皮膚科でどのような検査と治療が行われるのかを解説します。脱毛症はどれも同じに見えるかもしれませんが、風邪とインフルエンザがそれぞれ原因と治療が異なるのと同じように、脱毛症も種類によって検査や治療が異なります。脱毛症について正しい知識を身に着けて、適した治療を受けるようにしましょう。

男性に見られる代表的な脱毛症

男性に見られる代表的な脱毛症として「男性型脱毛症(AGA)」と「円形脱毛症」の2つを挙げることができます。脱毛症はつい「ハゲ」とひとくくりにしてしまいがちですが、原因や発生メカニズムはそれぞれ異なります。まずは症状と原因の違いを理解しましょう。

男性型脱毛症(AGA)

男性型脱毛症(AGA)は男性に多く見られる脱毛症です。発毛サイクルが男性ホルモンの影響で乱れることによって起こるほか、遺伝も原因になっていることがわかっています。症状の現れる部位は頭頂部や前頭部で、毛髪のコシがなくなり、短く弱々しい状態になっていきます。症状が進行すると額から頭のてっぺんにかけて毛髪がなくなってしまいます。

円形脱毛症

円形脱毛症は突然起こることが多く、硬貨サイズの丸い範囲で毛髪が抜け落ちてしまいます。頭の数カ所で同時に起こることもあり、ひどいときには毛髪全体や体毛まで抜けてしまうケースがあります。発生箇所が少なく、症状が軽い場合は自然治癒が可能ですが、重症の場合には治療が難しくなります。

 

男性型脱毛症(AGA)の皮膚科での検査・治療

AGAは皮膚科で検査できますが、自由診療ということもあり、病院によっては充分な治療を受けられない場合があります。まずは病院を訪問する前に、電話でAGA治療が可能か確認するようにしましょう。もし訪問先の病院が脱毛症外来を設けているようなら、脱毛症の専門医がいるということなので、より詳しい検査・治療が受けられると思ってよいでしょう。

皮膚科で行われるAGAの検査

皮膚科では主に問診と頭皮検査、遺伝子検査でAGAの診断を行っています。

・問診

問診では、脱毛の状況や、血縁関係にAGAの人が存在するかを聞かれます。AGAは遺伝も一因になっているため、血縁関係にAGAの人がいるか否かは重要な判断材料となります。

・頭皮検査

頭皮検査で肉眼による視診と、拡大鏡を使った視診が行われます。肉眼では額から頭頂部にかけて、AGAの特徴である毛髪の変化を確認します。毛髪は細くなっていたり、短くなっていたりするなど、成長不足の状態が確認されるとAGAの疑いが強くなります。 肉眼による観察だけでは判断が難しい場合には、拡大鏡で頭皮チェックを行います。毛穴に皮脂が詰まって黄色の斑点状になっていたり、後方周囲に色素が沈着して茶色くなっていたりするとAGAであると判断されます。

・遺伝子検査

全ての皮膚科で行っているわけではありませんが、遺伝子検査でより信頼性のある診断を下すところもあります。これは問診のところでも説明しましたが、AGAは遺伝も関係していることが判明しているからです。国内の皮膚科で行われている遺伝子検査は「CAG・GGCリピート検査」と「SNP検査」の2種類です。 CAG・GGCリピート検査ではX染色体上にある塩基配列の繰り返し(リピート)頻度を調べます。塩基配列の繰り返しが少ないとAGAを発症しやすいとされています。 SNP検査では、生まれつきAGAになりやすい体質であるかを確認します。

皮膚科で行われるAGAの治療

皮膚科では、日本皮膚科学会のガイドラインに沿ってAGA治療が行われます。ガイドラインの標準治療では、外用薬、内服薬、植毛術、かつらを用います。ガイドライン記載の治療推奨度が最も高くなっているのは外用薬で、続いて内服薬となっています。植毛術については推奨度が低いため、AGA治療で行われることはまずないと思ってよいでしょう。

・外用薬

ミノキシジルが含まれるローションを塗布して治療を行います。ミノキシジルは毛乳頭細胞に作用して成長因子を生み出します。成長因子によって毛母細胞は増え、発毛・育毛に繋がっていきます。AGA治療では主流となっている治療法で、ほとんどのケースでこの治療が行われます。

・内服薬

デュタステリドやフィナステリドなどを用いることで毛包の縮小を抑えます。これらの成分は頭頂部の薄毛に効果があります。ただし自費診療となってしまうため高額な治療となってしまうことがネックポイントだといえるでしょう。

・植毛術

手術によって後頭部など問題なく発毛している部位から毛包ごと毛髪を移植してしまう治療です。自分の体から移植するものなので拒否反応などの心配もありません。移植先の髪質は移植元と同じになりますが、本人の頭髪同士ということもあり、違和感を覚えるようなことはないでしょう。もちろん自然な生え変わりも行われるようになります。治療としては有効な手段なのですが、手術ということもあって実際に行われることはまれな治療です。

・かつら

薄毛であることを隠したい、目立たなくしたいときに使うもので、QOL(生活の質)を向上させるために用いる手段です。

 

円形脱毛症の皮膚科での検査・治療

皮膚科で行う円形脱毛症の検査・治療について解説します。円形脱毛症の詳しい原因は2017年の段階ではっきりと判明しておらず、リンパ球が毛球部(毛が作られる細胞)を攻撃する自己免疫反応ではないかといわれています。そのため治療も自己免疫反応の抑制を目指すことが基本となっているようです。

皮膚科で行われる円形脱毛症の検査

円形脱毛症は、多くのケースにおいて特別な検査は行われず、問診や視診で診断を下します。発症する原因のほとんどは疲労やストレスによるものですが、梅毒などの感染症、全身性エリテマトーデスや橋本病などの自己免疫性疾患が疑われることもあります。その場合は疑いのある病気に対する血液検査や診断を行い、根本原因を特定していきます。

皮膚科で行われる円形脱毛症の治療

円形脱毛症は重症度や発症してからの経過期間で治療方法が変わってきます。重症度については脱毛している面積で判断し、25%以上脱毛してしまっている場合は重症とみなします。

・軽症(25%未満の脱毛)の治療例

塩化カルプロニウム液や頭部に用いるステロイド剤などの外用薬を処方します。また、第2世代抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬やセファランチン、グリチルリチンなどの内服薬も併用します。医師によっては液体窒素で冷却する治療法を行うこともあります。これらの治療を行っても目立った改善が見られない場合や、発症から6ヶ月以上経過してしまっている場合には、ステロイド剤を局所注射したり、局所免疫療法を試したりします。

・重症(25%以上の脱毛)の治療例

発症から6ヶ月以内の短期間で重症化している場合は入院が必要となります。入院中はステロイドパルス療法で、ステロイド剤を大量に点滴します。また、ステロイド剤を内服させることも有効な手段であり、内服投与も検討します。ステロイド剤の治療は、円形脱毛症を引き起こしている自己免疫反応の抑制を期待できます。ただしステロイド剤には副作用のリスクがあり、長期間の投与には注意が必要となります。また、医師によっては紫外線療法を用いる場合もあります。

 

まとめ

皮膚科で行う脱毛症の検査・治療について、AGAと円形脱毛症を例に挙げてご紹介しました。脱毛症はれっきとした病気であり、医師の診断と治療をしっかり受けなければならないことがご理解いただけたと思います。

しかし考え方を変えると、ハゲ・薄毛は適切な治療を受ければ改善するものだということもできるのです。ハゲ・薄毛になるのは仕方がないことと諦めず、医師に相談してみてはいかがでしょうか。